映画 ハドソン川の奇跡

 映画「ハドソン川の奇跡」初日に見ました。2009年1月15日に155人を乗せた旅客機が離陸直後にバードストライクによるエンジントラブルによりハドソン川への不時着し、全員が助かった事故を扱っています。機長は一躍、ヒーローになるが、なぜ飛行場に戻れなかったかということで調査を受けることになります。

柳田邦男さんの気付きの力という本で次のように述べています。

アメリカでは、事故の諸要因を解明する上で不可欠の関係者の赤裸々な証言を得るために、事故調査機関 (NTSB=運輸安全委員会)による関係者の証言調書をはじめ調査資料は捜査や裁判における証拠としては使わないことになっている。アメリカの事故調査体制で、もう一つ重要な点は、明らかに犯罪やテロの疑いがない限り、捜査機関が事故調査機関の調査活動を制して、現場検証や関係者への事情聴取をすることはないということだ。事故調査活動が優先されるのである。

 これは、事故の要因と構造的な問題を洗い出し、それら一つ一つに対して、再発防止の対策を立てるが、事故調査の究極の目的であるためです。

 「ハドソン川の奇跡」においても奇しくも事故調査機関 (NTSB=運輸安全委員会)による調査の場面がありましたが、空の安全はこのようにして保たれているのかと改めて思い知らされました。

 一方、日本では1985年の日本航空ジャンボ機墜落事故でも、航空事故調査委員会による調査よりも、県警による調査が優先されたということです。要するに今後の事故防止より犯人捜しが大事ということです。航空機事故に限らず、日本では事件や事故があると直接の担当者が処罰を受け、申し訳程度の研修をして「意識改革」を図ることにより、一件落着ということが往々にしてあるように思います。

 話は変わって豊洲新市場の問題ですが、小池知事は昨日の会見で

犯人捜し、そこが目的ではなくて、都政のガバナンスですね

 と仰っていました。担当者を処分するのではなく、なぜ、担当者がそうせざるを得なかったか、という構造的な要因を詳らかにしてほしいと思いました。